思春期特発性側弯症
治療
思春期特発性側弯症の治療は主に3カテゴリーに分類される.経過観察、装具療法、そして手術であり、これらはカーブ進行のリスクをもとに選択される.一般的に、思春期特発性側弯症でのカーブ進行はふたつの経過をたどることが知られている.
患者の身体的成長期に伴う進行カーブが比較的に大きい場合の成人期以降での進行側弯症は成長期に悪化する為に、今後どれくらい身体が成長するかどうかは、年齢、女子の場合の初潮の有無、レントゲン画像所見等を考慮して判断することになる.一般的に、女子は14歳頃まで成長期が続き、男子は16歳頃まで続く.女子は、初潮を向かえる頃に急激に成長し、その後は鈍化する.しかし初潮後も一年半から二年間はゆっくりではあるが成長は継続する.脊柱と骨盤のレントゲン画像もまた成長期の判断に用いられる.骨盤でのリッサーサイン評価法は、脊柱が今後どれだけ成長しうるかということと関連があることから、こどもの骨成熟度の判定に用いられる.
リッサーサイン評価法はこどもの骨成熟度を0(ゼロ)から5段階で評価する.リッサーサイン0(ゼロ)と1の患者は、急激に成長する時期であり、一方リッサーサイン4や5の患者は成長が停止する時期を示す.一般的に、側弯症専門医師の治療を受けている患者は、成長のポテンシャルを判断する為に通院のたびに身長を測定する.
カーブは大きければ大きいほど進行しやすく、さらに悪化しやすい.45度を超えるカーブで成長期にある患者、あるいは成長期は終えたが50度を超えるカーブの患者は、ゆっくりではあるがその後の経過とともに進行が続き得る.
これは大半の患者に当てはまる法則であるが、患者個々の様々な条件によって変化しうるものであり、主治医が患者ごとに判断する.
経過観察
経過観察は、一般的に25度以下のカーブで今後も成長する患者の場合、あるいは50度以下ですでに成長期を終了した患者に対して行われる.
装具療法
装具はカーブが25度から40度で、成長期にある患者に対して行われる.
装具の目標は、カーブ進行を抑制することである.これは、患者が装具を装着することでカーブが矯正されることにより達成される.こうすることで時間の経過によってもカーブは進行しない.装具療法を終了したとき、最良のケースはカーブ進行がまったく見られなくなる事であり、装具を開始した時のカーブの大きさが維持されることである.例えば、歳でリッサーサイン0(ゼロ)、カーブ30度にて装具療法を開始し、リッサーサイン4またはで、初潮後年を経過し脊柱の成長が完了する時期まで装具装着というような指導が行われた場合、最良のシナリオは、カーブ進行を抑制でき、30度のカーブで装具療法が終了できることである.仮に装具装着において多少のカーブ進行があったとしても、成長終了時に側弯が45度以下である限り、多くの場合手術は不要である.何種類かの装具が存在するが、基本的概念は同じである.装具は衣服の下に着用され、他人からは見えない.
手術治療
手術治療は、原則として側弯が45度以上で依然として成長期にある患者、あるいは成長期は終了しているが50度以上のカーブを有する患者に対して行われる.
手術治療の目標はふたつある.ひとつはカーブ進行を抑制することであり、もうひとつはカーブを矯正することである.現在の手術治療は、脊柱に取り付ける一本あるいは二本のロッドを組み合わせた金属インプラントを用いて行う.これらのインプラントで曲がった脊柱を矯正し、脊柱の骨癒合が完成するまでの間その矯正状態を維持する役目を担う.
手術は背中を真っ直ぐに切開して行う方法図9)と側胸部や側腹部を切開して行う方法(図10) がある.それぞれの方法に長所と短所があるが、思春期特発性側弯症の治療では後方アプローチがよく用いられ、いかなるカーブのタイプにも対応が可能である.前方アプローチは、胸椎シングルカーブあるいは腰椎シングルカーブを治療する際のオプションとなる.様々な条件や要素を考慮して手術法は決定される.主治医がオプションも含めて検討を行い患者にとって最善の方法を選択することになる.
手術後には、装具やギプス固定はあまり用いられない.日本においては、入院期間は一般的に3週から4週間ほどである.患者は日常生活で通常の動作を行うことが可能であり、一般的に4週間から6週間ほどで学校に戻ることができる.患者個々の活動性にもよるが10代の患者では、術後6ヶ月から9ヶ月ほどで全ての活動に参加することが可能である.
これら3種類の治療方法は、科学的に十分に検討され、受け入れられている.側弯の矯正あるいはそれ以上の進行を防ぐ目的の代替医療、たとえば理学療法、カイロプラクィック、ヨガ等は、側彎症治療においていかなる価値があるか科学的根拠は一切示されていない.しかしながら、これらが患者に対して例えば身体強化、症状緩和等何らかの身体的メリットを与えるのであれば、それらの方法も用いることは考えられるであろう.しかし、それらの方法を側弯症の改善を期待して、側弯症に対する主要な治療方法としては決して用いてはならない.

図9: 後方法

図10: 前方法
側弯とともに生きる
一般的に、思春期特発性側弯症はそのことによって病的症状を引き起こすことはないので、患者の日常活動を制限する必要はない.軽度側弯症の患者や経過観察中の患者は、全ての活動になんら制限を加える必要はなく、またそのことでの障害のリスクもない.装具療法中の患者では、装具を外している時は全ての活動に対して制限はない.手術を受けた患者では、術後どの位の期間どのような活動が制限されるかについて主治医から指導を受けることになる.








